鹿児島地方裁判所 平成9年(ワ)564号 判決 1997年8月07日
鹿児島市東郡元町三番八号
エクセレント中央三〇二
原告
高木林
東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
法務省内
被告
法務大臣 松浦功
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
一 請求の趣旨
1 納付済所得税金一二一九万円を返還せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の原因 別紙のとおり
理由
本件訴えは、納付済の所得税の返還を求める給付訴訟と解されるから、本件訴えは、被告適格を有しない者を被告とする不適法なものである。原告は、本件訴状において被告を法務大臣松浦功としていたが、裁判所から被告を明確にするよう補正を命じられたところ、被告を鹿児島税務署長尾曲賢とする旨の書面を提出した。しかし、原告の右行為は、被告を変更するものであるから、そのような変更は認められないし、本件訴えの被告を鹿児島税務署長尾曲賢としても、本件訴えが被告適格を有しない者を被告とする不適当なものであることに変わりはない。
以上によれば、原告の本訴請求は、被告適格を有しない者を被告とする不適法なものであり、これを補正することはできないから、口頭弁論を開かずにこれを却下することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木順子)
別紙
原告が所有していた鹿児島市谷山塩屋町字清見寺七五五番壱宅地七二七・三〇平方メートルが昭和六二年六月五日、鹿児島地方裁判所の競売により徳永忠久に売却された。
当該宅地は土地区画整理法九八条に基づき同五八年八月一日付けで区画整理事業施行者である鹿児島市長から仮換地変更指定通知(仮換地ブロック番号五四、地積五六〇・〇三平方メートル)を受けていたものであるが、仮換地の使用収益権については民事執行法八三条に規定する引渡しの申立てが買受人からなされなかったし又同条に基づく引渡命令もなかった。それで買受人への仮換地の引渡しは行われなかったことになるから昭和六二年分の譲渡所得はなかった事になる。また譲渡所得申告の対照となるためには、原告において資産を譲渡する意思がなければならないが、鹿児島市谷山塩屋町字清見寺七五五番壱宅地七二七・三〇平方メートルについては原告に譲渡の意思はなかったものであり所有権が買受人に移転した原因は登記原因にも明らかなように「競売による売却」であるから譲渡とはいえない。したがって譲渡所得は発生して居ない。
原告は、昭和六二年分の所得税の確定申告書に総所得金額二三三万六三五四円(内訳不動産所得の金額一〇七万三三五四円、給与所得の金額一二六万三〇〇〇円)分離長期譲渡所得の金額五六七六万円納付すべき所得税額一二三一万八一〇〇円と記載して昭和六三年三月一七日鹿児島税務署長に対して所得を申告し、その後右所得税を納付した。
原告は、右確定申告書に記載の分離長期譲渡所得に係る資産の譲渡はなかったとして、同年九月一四日鹿児島税務署長に対し総所得金額二三三万六三五四円(内訳不動産所得の金額一〇七万三三五四円給与所得の金額一二六万三〇〇〇円)分離長期譲渡所額零円、納付すべき所得税額一二万八一〇〇円とする国税通則法二三条一項に基づく更正請求をした。これに対し鹿児島税務署長は同年一二月二二日付けで更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。